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「一国二制度?ダブルスタンダード?F1の未来。」

2010年から採用されるF1の予算制限制度。マックス・モズレー氏の強いイニシアティヴで進むこのお話は、単にF1の話としてみてしまうには惜しいのです。さまざまなケーススタディとして見たり、仲間内で議論してみる題材としてはなかなかのものです。

そもそもの話はこうです。マックス・モズレーFIA会長はF1の将来像を描くために、つまりこの世界的な危機を乗り越え、F1の豊かな未来(というかビジネスのサスティナビリティ)を目指して、新たな枠組みを昨年より提案してきました。それは2010年より参戦するチームに4,000万ポンド(59億1,250万円)という予算制限・・つまりキャップ制を導入しようというもの。そしてその制限を受け入れるチームと、受け入れないチームつまり予算がたくさんあるチームとに、異なったレギュレーションを適用しようというもの。タイトルに書いたひとつの競技にふたつのスタンダードが存在する、奇妙な一国二制度のようなものになろうとしています。

最近ではチームスーパーアグリが「それならば」と名乗りを上げかけたかの新聞報道。チーム側はすぐさま「そのような計画は無い」と否定。ですがまあ、いくつかのチームが次々とF1への挑戦に実感を得ているのも事実です。

ところがフェラーリを筆頭に、大手のチームからは次々に「撤退する可能性」の警告が発せられ続けています。ではこのキャップ制でどのように規則が違うのでしょうか?

公式プレスリリース

世界モータースポーツ評議会 2009年4月30日

世界モータースポーツ評議会の臨時会議が2009年4月29日パリで開催され、以下の決定が下された:

フォーミュラワン・ワールドチャンピオンシップ

2010年FIAフォーミュラワン・ワールドチャンピオンシップ
2010年FIAフォーミュラワン・ワールドチャンピオンシップ参戦の申請は、2009年5月22~29日の期間FIAに提出されるものとする。チームは、コスト制限規約の下で参戦したいかどうかを申請書に記載しなければならない。

チャンピオンシップ参戦が認められるマシンの最高台数は26台まで引き上げる (各参戦者は2台ずつ出走)。

FIAは、先に受理されなかった申請者に通知し、2009年6月12日に受理したマシンとドライバーのリストを公表する。

コスト制限規約

2010年から全チームは厳しいコスト制限内でマシンを製造して参戦するという選択肢が与えられる。

2010年のコスト上限は年間4,000万ポンド(58億284万円*)になる予定。この数字はチームの全支出をカバーするが、以下を除く:

・ マーケティングおよびホスピタリティ;
・ 若手ドライバー・プログラムを含むテスト・ドライバーおよびレース・ドライバーの給料;
・ FIAから科せられた罰金およびペナルティ;
・ エンジン・コスト(2010年のみ);
・ チームがチャンピオンシップのパフォーマンスに影響がないことを証明できる支出;
・ チャンピオンシップ参戦に関する収益から支払われる配当金(それに対する税金を含む);

これら規約の事業年度は1月1日から12月31日までである。

これらコスト制限の財務規制を監視・実施する新しいコスト委員会が設立されている。コスト委員会は、WMSCが3年の任期で委員長ひとりと委員ふたりから構成される予定である。委員のひとりは金融専門家であり、もうひとりはモータースポーツにハイレベルの経験をもつ。委員長はモータースポーツあるいはスポーツ運営に適切な経験と身分を有する。コスト委員会のメンバーは全員、全チームとは無関係である。

チャンピオンシップのトップ10チームに対する支払いに加え、商業権保有者フォーミュラワン・マネージメントは新チームに対する参戦料と経費を提供することに同意した。これには各チームに対する年間1,000万ドル(9億8,420万円)の支払いに加え、2台のシャシーおよび1万kgまでの貨物の輸送費、ヨーロッパ以外で開催されるイベントの往復飛行機チケット20人分(エコノミークラス)が含まれる。

この受給資格を得るためには、新チームは「コンストラクター」として見なされ、F1に参戦するために必要な施設、財源、技術的能力を有することを実証しなければならない。

コスト制限を受けないチームに対して立ち向かうために、コスト制限マシンにはより大きな技術的自由が認められる。

認められる主な技術的自由は以下の通り:

1. フロントおよびリアの稼動ウィング
2. 回転数制限を受けないエンジン

またチームは風洞テストのスケールおよび速度の制限なしに無制限のオフ・シーズンのトラックテストが認められる。

全チームに適用される変更

2010年から、給油装置の輸送コスト節約と、エンジンメーカーが燃費を改善(して重量を節約)するインセンティブを増加させるために、レース中の給油禁止が確認された。

また、タイヤ・ブランケットが禁止され、他のタイヤ保温装置の禁止も継続されることが確認された。

2010年競技規約および技術規約の詳細とさらなる改正はまもなくwww.fia.comに掲載される。

例外として、安全委員会の支持があれば、FIA世界モータースポーツ評議会は、資格証明手続きの目的に合致すると判断した人物にフォーミュラワン・スーパーライセンスを発行することを承認する。

専門誌の記事

フェラーリのルカ・ディ・モンテツェモロ会長は、この制限は適切な予告なしにチームに押し付けられたと述べている。フェラーリは、取り締まりを巡って問題が発生し、不正の申し立てが行われることは必至なので、この規約はF1にダメージしか与えないと主張している。

ディ・モンテツェモロは、来シーズンは制限された予算で技術的により大きな自由を与えられて運営されるチームと、何億ポンドも使いながら技術を厳しく管理されるチームという2段階のチャンピオンシップが出現すると警告している。彼の意見には、ウィリアムズやマクラーレン・メルセデスも同意している。

フェラーリ会長はモズレーに「ふたつのカテゴリーが生まれるかどうかに関する疑問は、必然的に一方のカテゴリーが他のカテゴリーよりも有利になることを意味しており、チャンピオンシップが基本的にアンフェアに、そしておそらく偏ったものになるだろう」と書いている。「いずれにしても、これは一般大衆に混乱をもたらし、F1の価値をひどく低下させるだろう」

ディ・モンテツェモロの書簡は、FIAとモズレーが3月に概説した当初の提案より1,000万ポンド(14億7,812万円)多い予算制限の詳細を発表し、一部強豪チームでは大規模な解雇につながる可能性を受けたもので、この制限にはほとんどの支出が含まれるが、マーケティングとホスピタリティの予算、ドライバーの年俸、エンジン・コスト(2010年のみ)は除外される。制限を受けるチームは、回転数制限のないエンジンなどいくつかの技術的自由が認められる。

モズレーはフェラーリの懸念にも動じていない。ディ・モンテツェモロに対する返信の中で、モズレーは世界的不況はF1の主な収入源である自動車業界と金融サービス部門に大きな影響を与えていることを強調し、彼はこれに対応する義務があると述べている。

タイムリミットはもうそこまで来ています。フェラーリ、BMW、トヨタやレッドブルらは29日までにこの規則が撤回されない限り、撤退するとしていてほかの多くのチームもこれに追随するとみられています。今のところ申請をするのはブラウンGP、ウイリアムス、フォース・インディアのみ?

この数日はドーバー海峡を挟んで、さまざまな会議がもたれていることでしょうね。強気を貫くマックス・モズレー。果たして参加枠を広げるために名門チームを捨ててしまうのか?名門チームもそうだからといってF1から撤退して、また新しい組織を作ろうという動きをするのでしょうか。

改革とその真意。企業活動にも同じように表れる現象です。つまりは指導的な立場に立つ人の力ばかりではなく誠実さ、さらに言えば清貧で無私であることが望まれるというわけです。長者番付の上位を独占し続けていては改革はおぼつかないものです。

F1という巨大なブランド。このような大きな事業の集合体が奇跡的に生まれ繁栄してきたのは、自動車に対する夢とロマンがあり続けた時代のこと。

さあ、これから新しい自動車業界とそのブランドの醸成に、世界はそして自動車メーカーらはどのように動くのでしょう? 

No.029 09/05/15



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Creative Director
山田 徹 Yamada Tetsu 株式会社グローブコンペティション代表取締役

最近(2008年4月)事務所を郊外に移転しました。そこは趣味のラリーマシン製造のために田舎に所有していた鎮守の森の前にある自動車工場を大改造して制作。本来デザイナーの腕としては自信がある?ものの今回は「原則として廃材や貰い物で、作る。図面は引かない!行き当たりばったりで作る」というコンセプト。友人の世界的建築家の有馬裕之氏も「・・・・」と大納得?の新オフィスで、いまだ未完成の部分をどうしようかと悩んでいるようです。その有馬氏は、ここにリエゾンオフィスを置こうかと思案中とのこと。特に表に向けて閉鎖的、裏に向けて開放的!!?な事務所。来る人を阻み、来た人を快適に、が特徴だそう。

1階はベランダ部分が主な打ち合わせスペースですが、目の前はすぐ鬱蒼とした森。ベランダからはすぐに小径があり、鎮守の森の散歩が出来ます。またこの森は特に小鳥が多く、午前中は素晴らしい鳥の鳴き声で至福の時間が得られます。椅子は本人がコレクターだというだけあって、ものすごくたくさんあります。今度はデザイナーや建築家と林業関係者らとのコラボレーションで「木の椅子」を展開するプロジェクトも進んでいます。さらにはツリーハウス・プロジェクトは、都市と中山間の交流促進と、ただの遊び場ほしさの提案が進んでいます。さらに四国八十八カ所にならった?小さな山の中のトレイルを作ろうと考えているようです。

基本的には読書が趣味ですが、1年のうちの半分近くを旅と読書で過ごしています。クリエイティヴディレクター、コピーライター。時々イラストも描きます。環境問題は25年前から積極的だったのですが「最近はヒステリックな温暖化原理主義はいかがか?」と思案中。環境に特化した地域のフリーマガジンを計画中!なのですが、「環境問題はなにが問題なのか」みたいな切り口ではじめたいらしいので、しばらくしたらこのウェブサイトでも事後報告が出来るかもしれません。どうぞこれからもよろしくお願いします。

09/03/03