城野 康信
総合プロデューサー / APECアーキテクト / 一級建築士
城野は自他ともに認める「踊るイベントプロデューサー」である。実はこのLLPの「サル」とは、彼のライフワークである「サルサ」をもじったものだ。建築を専攻し、突き詰めたところで「箱作りだけでは物足りないなあ、中身も創ってこそだ」という彼独特の自然な思いが広告会社の扉を叩かせた。「中身は作るが箱を作らない広告会社、箱を作るが中身を作らない建築家」そのギャップについて深く彼は考えた。
つまり「踊るプロデューサー」とは「踊る建築家」、つまりそういうことである。建築のための建築を志したのではなかった。彼が私淑するのは盛期ルネサンス期のミケランジェロ。彫刻家であり建築家であり画家として、いやその芸術分野は広大無辺なものである。その広がりに城野は目を瞠った。その広がりとは現代の思考回路ではおおよそ掴むことのできない「空間芸術」もしくは「時空芸術」であろうと考えたのだ。
「偏狭で近視眼的な専門分野だけに終始して、私たちに共通したジレンマの解決なんて他人まかせ(中略)出来る限り長距離思考を使ってぶっつかっていくことに、わたしは出来れば子供じみた最善を尽くしたい」」(*バック・ミンスターフラー『宇宙船地球号操縦マニュアル』2000年10月)
ADK勤務時代には赫々たる実績を上げた。自動車会社の国内外のVIなどを手がけ2002年「愛知万博日本館」の総合プロデュース展示や空間演出を担当。その成功を受け、2010年の上海万博では大きな話題を呼んだ「中国民営企業連合館」の建築・展示・運営を含む「総合プロデューサー」として手腕に磨きをかけた。これらこそ城野の考える理想のひとつのカタチだった。長い上海での活動のあと、帰国後は建築や展示にとどまらず、つまり空間としての可能性をさまざまな形で見つめ実践していく。そして2018年、ADKを退社。今回のこのLLPで、「空間芸術」をさらに研究し突き詰めたいと語る。
「空間に、映像や音楽、照明、ライブパフォーミングアーツなど必要に応じなんでも組み入れるやり方を取り入れています。この度の相方のおひとり高木さんとは、広告会社在職中にマンガやアニメ、歌舞伎といった「コンテンツ」ビジネスの進め方を叩き込まれました。その高木さんが人生の師と仰ぐ山田さんを含めて3人で仕事を進める今回の機会は、望外のことでした。ワクワクしています。皆さんと一緒に新しい「クウカン」を味わい尽くせればよいなと考えております。よろしくお願いいたします。」
2012年 科学で体験するマンガ展